お彼岸には仏壇参りやお墓参り、という方も多くいるでしょう。
まさか、手ぶらで出かけている、なんていうことはないですよね??
「お供え物が必要なんでしょ!?大丈夫!持ってるから!」という方、そのお供え物はきちんとふさわしいものを選んでいますか?
また、正しい包み方や表書きとなっているでしょうか?
世の中には何事にも常識やマナーというものがあります。
お供え物についても同様で、何をどのようにお供えしても喜ばれるという訳ではないのですね。
そこでこの記事では、仏壇参りやお墓参りの機会が多いお彼岸のお供え物に着目し、「お供え物の基本である五供について」「お供え物は仏壇とお墓参りで意味合いの違いはあるのか」「お彼岸の定番のお供え物」「お供え物として避けた方が良いもの」「おはぎとぼたもちの違い」「お供え物への掛け紙について」「お供え物に添える手紙の書き方や注意点」という流れでまとめました。
せっかくお供え物をするのですから、100%喜ばれる形で行いたいものです。そのために参考になれば幸いです。
お供え物の基本「五供」とは
彼岸には、親族・親戚が集まり仏壇に様々なお供え物をするという機会があるでしょう。
先祖への供養や感謝の念を伝えるために、しっかりと正しくお供え物をしたいところですね。
仏壇へのお供え物には、「五供(ごくう)」という基本があります。
言葉を分解すれば、5つのお供え物の基本ということです。
その5つの基本について、それぞれ紹介いたします。
お香
基本的に毎朝、線香をあげるのが1つ目の基本です。
線香をあげる前には水やお仏飯などのお供え物をし、その上でおりんを鳴らしてお参りをします。
仏様は香りを召し上がるとされているので、線香から放たれる香りを供養の基本としているのです。
この香りは、お供えした人やその周囲の人々の心と身体を清めるものとされています。
また、香りがその空間全体に充満することで、すべてのものに分け隔てなく平等に接するという仏様の慈悲の心を表すとも言われています。
ちなみに、線香のあげ方は宗派により、その本数や焼香の回数が異なってきます。
お花
仏様は香りを召し上がると書きましたが、線香だけではなく、お花の香りも召し上がります。
そのため、仏壇の両脇に花瓶を置き、お花を供えるのも基本です。
これを「供花(くげ)」と言います。
基本的には毎日お花を新しいものに取り換えるのが望ましいですが、なかなか忙しくそうもできない場合も多いでしょう。
その場合は、最低でも水替えは毎日行い、お花に元気がなくなってきたタイミングで取り換えるというのでも問題ありません。
麗しく新鮮な花を仏前にお供えすることは、その花のように美しく清らかな心をもった人間でいてほしいという仏様の教えや願いを表すことにつながります。
最近は、手入れに手間取らないドライフラワーや造花も人気なようですが、いつかは枯れてしまう様が人の世の無常さを表現するものであると言われているので、基本的には生花をお供えするのが望ましいようです。
ちなみに、棘があり、流血を連想させるような花はお供え物には適していないという考え方もあります。
お仏飯
お仏飯とは、ご飯をお供えすることです。
香飯とも言います。
普段食べているものと同じものをお供えすることで、仏様や先祖様とつながることができるとされています。
できるだけ毎朝、炊き立てのご飯をお供えするのが望ましいでしょう。
このお仏飯の解釈についての解釈は分かれており、仏様がその香りを召し上がっているという解釈と、仏様がご飯を召し上がることはないので、飾り物としてお供えしているという解釈があります。
ちなみに、どのくらいの時間お供えをしていればいいかという決まりはありません。
あまりに長くお供えし続けると、ご飯がカリカリに固まってしまいますので、その前くらいには下げるのが一般的です。
また、お正月やお盆、命日など特別な日には、故人が好きだったものなど、真心を込めて作った料理をお供えする場合もあります。
お水
お供えの水は、仏壇に向かった時には毎回新しくするのが基本です。
毎朝はもちろん、例えば来客があり手土産品を頂戴し、それをお供えする際にもその都度変えるようにする必要があります。
毎回お水を変えるのは、透き通った浄水をお供えすることに重要な意味があるからです。
透き通った水は、けがれなき浄土を象徴するものという意味があり、仏様をその世界に導くために、不可欠なお供え物なのです。
また、仏様の清らかな心に私たちも洗われたいとの願いも込められています。
ちなみに、浄土真宗の場合には、水をあげません。
それは、浄土には「八功徳水」という8つの功徳を備えた水がすでにあるため、現実世界の水をお供えするのはふさわしくないという考えがあるためです。
お灯明
お灯明とは、ろうそくの明かりのことです。
水やお仏飯をお供えした後に、ろうそくに火を灯すのが一般的です。
これは仏壇を照らすという意味だけではなく、供養する人の心も引き締め、仏様の教えを守ろうとする気持ちを助ける働きもあります。
本来ならろうそくがなくなるまで、火を灯し続けるべきなのですが、それだと火事を起こしてしまう心配があるので、お祈りが終わった時に消して問題ありません。
しかし、消し方には注意が必要です。
誕生日ケーキのろうそくを消すように、口で吹き消してはいけません。
口は不浄であり、先祖に対して息を吹きかけることは失礼にあたってしまうためです。
手でぱたぱたとあおいで消す、もしくはろうそくを軽く振って消すのが正しい消し方となります。
以上が、お供え物の5つの基本となる「五供」についての説明でした。
それぞれの意味や役割、方法についてきちんと理解し、正しく仏様にお供えをしたいところですね!
お供え物は仏壇とお墓参りで意味合いの違いはある?

お寺の本堂
仏様に供養する方法として、仏壇参りとお墓参りの2つの種類がありますが、大きな意味合いの違いはありません。
お供えするものの内容についても、それぞれ特別なものがあるという訳ではないのです。
ちなみに、大きな違いとすれば、お参りするタイミングです。
仏壇参りは基本的に毎朝と就寝前に行うものです。
一方でお墓参りは、いつどのタイミングで行っても構いません。
どちらのお参りを行う際にも、まずは掃除をしてから、お供え物をして、お祈りを捧げるという順番になります。
お墓参りの際には、食べ物のお供え物には注意が必要です。
真夏に長い時間炎天下にさらしていると、食べ物が傷んでしまうこともありますし、万が一置いて帰ってきてしまうと、腐敗したり鳥などの動物に荒らされたりすることがあります。
お墓は故人が安らかに眠っている場所ですので、特にこの点には注意が必要かもしれません。
お彼岸の定番のお供え物といえば?

ぼた餅
お彼岸のお供え物として、定番なのは日持ちするお菓子です。
具体的には、お饅頭やせんべい、クッキー、羊羹といったようなものになります。
また、特に牡丹餅やおはぎも人気のお供え物です。
牡丹餅やおはぎに使用されている小豆の赤色には、邪気を払い、災いが降りかからないようにしてくれる効果があると言われているためです。
季節的には、牡丹餅は春、おはぎは秋のお供え物としておススメです。
おはぎとぼたもちの詳しい違いは後述していますので、参考にしてみて下さい。
遠方から伺う場合には、地元の特産物を持参するというのも喜ばれます。
お供え物を食べるタイミングとしては、彼岸の中日にあたる春分の日と秋分の日がいいでしょう。
しかし、それよりも前にお供えをして、なおかつその食べ物が日持ちしないものであった場合には、その限りではありません。
秋分の日ごろはまだまだ暑さが残る時期で、長くお供えをしていると食中毒を催してしまう危険性もあります。
できるだけ新鮮なうちに、傷んでしまわないように食べるのがベターです。
お供え物として避けた方が良いもの
食べ物をお供えする場合には、生鮮食品は避けた方がいいでしょう。
それは、上述している通り、すぐに傷んでしまう危険性があるためです。
お供えした後にいただいた食べ物で食中毒を起こしてしまえば、仏様を心配させてしまいますからね。
また、すぐに腐ってしまうような生鮮食品をお供えすることは、仏様への冒涜とも捉えられかねません。
また、サイズの大きすぎる食べ物も望ましくありません。
いくら、仏様が生前好んでいたものであっても、お皿や台座に乗りきらないようなサイズのものはお供え物にふさわしくないでしょう。
そして、殺生に関わる肉や魚といった食べ物も避けるべきです。
それは、仏教が殺生をよしとする教えではないためです。
また、花をお供えする場合にも、その種類には注意が必要です。
基本的にはどんな花を供えてもOKとされていますが、彼岸花やバラ、夾竹桃(キョウチクトウ)といったような種類は避けた方がいいと言われています。
それは、針や棘がある、毒がある、悪臭があるといったような特徴があるためです。
仏様が生前、特別に好んでいたというような場合は別ですが、基本的にはこのような花はお供え物としては避けたほうがよいのです。
彼岸のお供え物の定番おはぎとぼたもちの違いとは?

ぼたもち
おはぎとぼたもちに違いはありません。同じ食べ物のことです。
ただ、季節によって、名前が違うだけです。
おはぎとぼたもちを漢字で書いてみると違いが分かってきます。
おはぎは、御萩と書き、萩は秋の花のことです。
ぼたもちは、牡丹餅と書き、牡丹は春の花のことです。
ただ、牡丹の花と萩の花は大きさが違うため、大きさも違います。
牡丹の花は大きいため、大きめのぼたもちになっています。
萩の花は小さいため、小さめのおはぎになっています。
和菓子は季節に合わせた花などをテーマに作られているため、秋の秋分の日には、おはぎと呼び、春の春分の日には、ぼたもちと呼んでいたためです。
季節に合わせてということは、夏や冬にも名前が違う同じ食べ物があります。
夏は、よふね(夜船)、冬は、きたまど(北窓)と呼ばれています。
老舗の和菓子屋さんに行けば、夏や冬にも夜船や北窓という名前のおはぎやぼたもちとそっくりの和菓子に会えると思いますよ。
つぶあんとこしあんの違いは?

つぶあんのどら焼き
つぶあん派かこしあん派かなど好みによって違う人もおられます。
そもそも違いはあるのかを紹介していきます。
作り方の違い
つぶあんは、小豆を茹でた後、粒があるまま、砂糖などを加えて、さらに煮た物です。
こしあんは、小豆を茹でた後、ふるいで漉し、皮を取り除きなめらかにしたものに、砂糖などを加えた物です。
栄養価には大きく違いがあるので、ダイエット中の方はぜひ参考にして下さい。
つぶあん100g当りのエネルギーは244kcalですが、こしあん100g当りのエネルギーは155kcalです。
こしあんの方が、同じ量を食べてもおよそ100kcalほど低いので、カロリーダウンさせたい人はおすすめです。
つぶあんとこしあんの違いは皮があるかないかです。
つぶあんにはある原料となる小豆の皮の栄養価では、サポニンとカリウムが多く、注目です。
サポニンは血液中のコレステロールを下げる効果、利尿作用があるため浮腫み解消、高血圧予防が期待できます。
カリウムは利尿作用があるため浮腫み解消、高血圧予防が期待できます。
つぶあんとこしあんのどちらにもある栄養価で注目なのはビタミンB1、食物繊維です。
ビタミンB1は疲労回復効果、イライラ予防の効果が期待できます。
食物繊維は腸内環境を整える効果があり、便秘を改善します。ただし、不溶性食物繊維のため、食べ過ぎると便秘になるため、ほどほどにするのが大事です。
お彼岸のお供え物への掛け紙とのし

掛け紙
のしは必要?
お彼岸のお供え物をする際の掛け紙に、のしは必要ありません。
のしは元々、あわびを乾燥させたものが由来となっており、慶事等の幸せなことを「伸ばす」という意味が込められています。
一般的にはお歳暮やお中元の祝いに利用されるものであり、仏事であるお彼岸のお供え物にはなじまないのです。
そのため、のしのついていない掛け紙を利用します。
水引の色や本数
お彼岸の掛け紙には、黄白や黒白の掛け紙を利用するのが一般的です。
関西だと黄白、関東だと黒白を使う例が多いです。
紅白の掛け紙は、主に慶事に用いられるものですので、ここで使うのはふさわしくありません。
水引の本数については、偶数のものを選ぶようにしましょう。
5本、7本、9本といった奇数のものは、慶事に用いられるのが一般的です。
また、10本は偶数ではありますが、婚礼の際に用いられるものなので、これも選ばないようにしましょう。
基本的に、水引を選ぶ際に弔事用・仏事用のものを探せば、きちんと用意されているので、わざわざ自分で本数をカウントする必要はないので、その点は安心です。
ちなみに、結び目についても注目しておくと、蝶結びではなく、結び切りのものが正しいです。
蝶結びは、いくらほどけても、何度でも結びなおせるというところから、出産など何回あっても喜ばしい慶事の際に用いるものとされているためです。
表書きの書き方
お彼岸のお供え物の表書きとしては、「御霊前」「御仏前」が一般的です。
故人の四十九日法要が過ぎる前であれば「御霊前」、過ぎた後であれば「御仏前」と使い分けるのが良いでしょう。
仏教の多くの宗派(浄土真宗と曹洞宗以外)では、亡くなってから49日までは、生まれ変わり先について、審判を下している段階であると考えられているためです。
つまり、49日を過ぎれば成仏するということになりますので、上記のように使い分けます。
なお、「御供」や「御供物」といった表書きもおなじみです。
最近では、現金をお供えする場合に「御供物料」という表書きも増えてきています。
お彼岸のお供え物に添える手紙の書き方や注意点

シンプルなデザインの手紙
お供え物には、仏様への思いをしたためるために手紙を添えることもあるでしょう。
この時、何点か注意しておきたい点がありますので紹介いたします。
手紙のデザイン
これについては、シンプルイズベストです。
決して、派手なデザインを選んでもタブーというわけではありませんが、ふさわしくないと言わざるを得ないでしょう。
できるだけ、無地で絵柄がなく、地味なものが望ましいでしょう。
しかし、あまりにも味気なくて寂しいという場合には、目立たない程度に花の絵を添えるというくらいのデザインを加えることもあります。
手紙の書き方
デザインのところで派手なものは望ましくないと記しましたが、それは書く字についても同様です。
カラフルな色彩で書くのではなく、黒インクの万年筆かボールペンで書くようにしましょう。
マジックのように太さのあるペンで書くのも望ましくありません。
地域によっては、掛け紙の表書きに使う薄墨で書くところもあるようです。
封筒の種類
封筒は、必ず無地で白い一重のものを使用しましょう。
特に、二重の封筒を使うのは要注意です。
それは「不幸が二重に重なる」ということを連想させてしまうためです。
手紙の内容
まずは、ご遺族を励ましたり気遣ったりする言葉を書きます。
やはり、先立たれ残された家族の悲しみはいつになっても消えないものだからです。
具体的には、悲しさにあふれる心をいたわる言葉、体調を気遣う言葉を使うようにしましょう。
また、手紙を送るということは、直接お墓や仏前でお参りできないという状況でもあります。
そのため、文面において「合掌いたします」といったような言葉を表記するのを忘れないようにしましょう。
思いが募り、色々と長く書きたくなる面もあるかもしれませんが、必ず手紙は一枚に収めるようにしてください。
それは、二重の封筒がNGなのと同じで、不幸が重なることを連想してしまうことになるためです。
まとめ
この記事では仏壇参りやお墓参りの機会が多いお彼岸のお供え物に着目し、「お供え物の基本である五供について」「お供え物は仏壇とお墓参りで意味合いの違いはあるのか」「お彼岸の定番のお供え物」「お供え物として避けた方が良いもの」「お供え物への掛け紙について」「お供え物に添える手紙の書き方や注意点」について執筆しました。
仏教の教えということについては、日常生活から意識することはあまりないのですが、やはり宗教であるということもあり、色々と決まりが定められているのですね。
仏壇参りやお墓参りの習慣というのは万人にあるわけではなく、また家族など近親者についての場合だと、どうしても簡易な形で済ませてしまうこともあるのではないでしょうか。
もちろん、その感謝の思いが伝わるということが最も大切なのですが、それでもやはりお供え物はきちんとした形で行いたいものです。
というのは、故人はもう成仏されているので、仏教の教えというは生前以上に守られるべきものだからです。
実際に、「水引の本数とか、選んではいけない花とかよく分からない・・・」という方もいらっしゃると思いますが、ご不安な点はお店の方に伺えば問題ないでしょう。
そして、最大限故人に喜んでいただけて、さらに安心をしてもらえるようにしていきたいですね!