食欲の秋、読書の秋など、楽しみが多い季節とされる秋ですが、古来、秋は月が最も美しい季節とされてきました。春も同様に月が楽しまれる季節ではありますが、春は靄や霞の中にぼんやりと浮かぶ月というイメージがつよく、対して秋の月は澄んだ空気の中にはっきりと浮かぶ冴えたシルエットで多くの人の目を楽しませてきました。
そんな秋の月を楽しむ行事が、十五夜・十三夜・十日夜といったお月見の行事です。
2019年のお月見は何月何日に当たるのでしょうか。それぞれの日付や月見の由来・風習についてご説明します。
2019年のお月見はいつ?
月見といえば十五夜・十三夜ですが、そのような行事とは別に、月を眺める風習は、中国や日本では縄文時代ごろからあったと推定されています。ただし、古い時代には、月を忌む考えもあったと言われています。いずれにしても、十五夜などが一般的になるよりも前から、月を特別なものとして考える感覚があったことがわかります。
名月を見て楽しむ風習の発祥は中国で、唐代ごろだとされます。中国の観月の行事が平安時代の貞観年間(859-877)ごろに日本に入ってきて、旧暦8月15日の十五夜という行事になりました。なお、十三夜は中国にはない行事で、日本でつくられた風習です。
日本の代表的なお月見の行事は、十五夜と十三夜です。十五夜は旧暦8月15日、十三夜は旧暦9月13日にあたる日に行われます。
あまり一般的ではありませんが、収穫祭である十日夜(旧暦10月10日)にも、お月見をする家庭や地域があります。
2019年のお月見の日は以下の通り。
2019年のお月見
十五夜 9月13日
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十日夜 11月6日
お月見の際には、お月見団子に芋・栗・豆などの季節の作物で作った料理を添えてお供えをしましょう。また、神の依代とされるススキも、その脇にお供えとして添えるのが一般的です。
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月うさぎの伝説

雪うさぎ
月といえば、月にうさぎが住むという伝承を耳にしたことがあるのではないでしょうか。この月うさぎ伝説は、月の表面の影になって見える部分が、餅をつくうさぎに見えるということから来ています。
もともとは、月のうさぎが薬をつくっているという中国の伝承が日本に伝わったとされています。日本では、薬ではなく餅をつくうさぎとして広まりました。
月うさぎの伝承は非常に古くから言い伝えられ、いまでも童謡などで親しまれています。
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お月見のイベント
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お住まいの地域の月見のイベントに足を運び、にぎやかに月を観賞するのも楽しいのではないでしょうか。
今回は、全国の代表的な月見イベントをいくつかご紹介します。興味があるイベントがあれば、ぜひ足を運んでみてください。
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東京の月見イベント

東京タワーの夜景
向島百花園「月見の会」
東京の月見イベントの中でも古くからの伝統があるのが、向島百花園で開催される「月見の会」です。
東京都墨田区にある向島百花園は1804年に仙台出身の骨董屋・佐原鞠鵜によって作られた庭園で、国指定文化財となっています。江戸時代の太田南畝・酒井抱一など文人墨客に愛されたこの庭園には、現在でも四季折々の草花が多数植えられています。
向島百花園の「月見の会」は江戸時代からの伝統があり、初日に団子や野菜のお供え式が行われるほか、茶会や箏の演奏などが開かれます。期間中は園内を絵行灯が照らし、幻想的な夜の雰囲気を味わうことができます。
茶会(2000円)などは別料金’ですが、入園料は一般150円と安価ですので、気軽に訪れてみてください。
(向島百花園公式サイト:https://www.tokyo-park.or.jp/park/format/index032.html)
日枝神社「中秋管絃祭」
東京赤坂にある日枝神社では、月見にあわせて雅楽の演奏会が開かれます。
雅楽とは神社や宮中の儀式などの際に演奏される日本の伝統音楽で、箏・琴・琵琶・太鼓などの楽器が用いられます。中秋管絃祭では、その幽玄な音楽にあわせて、お巫女さんによる舞踊を鑑賞することができます。
鑑賞料は一人3000円です。雅楽を実際に生で鑑賞できるのは珍しい機会ですので、一度は訪れてみたいイベントです。
(日枝神社公式サイト:https://www.hiejinja.net/index.html)
深大寺「十三夜観月会」(「十三夜の会」)
十五夜ではなく十三夜に月見イベントを行うところも散見されます。その一つが、調布市にある深大寺の月見イベントです。水神を祀る深大寺は深大寺蕎麦でも有名。観月祭では、天台聲明(経文・真言に抑揚や旋律をつけたもの)や雅楽・能などが披露されます。荘厳な雰囲気の境内で月を楽しむことができます。
(深大寺公式サイト:https://www.jindaiji.or.jp/)
東京タワー「お月見階段ウォーク」
東京タワーでは、約600段ある外階段を、月見イベントの際に解放しています。外階段は、ふだんは週末の日中のみ解放されていますが、イベントでは夜間に十五夜の月をながめながら階段をのぼることが可能です。
また、十五夜イベントの開催日にだけ点灯されるライトアップも必見です。
(東京タワー公式サイト:https://www.tokyotower.co.jp/)
全国の月見イベント

三渓園の夕暮れの景色
三溪園「観月会」(横浜)
1906年に実業家の原三渓によって公開された三溪園は、国の名勝に指定される広大な庭園です。重要文化財に指定される古建築が数多く並び、四季折々の自然を楽しむことができます。
9月上旬(2019年は9月12日-9月16日)に開催される観月会では、三重塔などの古建築がライトアップされ、日替わりで音楽・舞踊などのイベントが催されます。
(三溪園公式サイト:https://sankeien.or.jp/)
大覚寺「観月の夕べ」(京都)
平安時代の貴族は十五夜に船に乗って水面に映る月を楽しんだとされますが、京都大覚寺ではそうした伝統的な月見の形を残すイベントが行われています。
嵯峨天皇の時代にはじまったとされる「観月の夕べ」。その伝統をふまえて、大覚寺では十五夜の時期に大沢池に舟を浮かべて、そこから見える美しい月を楽しみます。今年は9月13日から9月15日の開催が予定されています。
空の月と水面の月、ふたつの月を眺める幻想的なひとときが味わえます。
(大覚寺公式サイト:https://www.daikakuji.or.jp/event_season_autumn/)
諏訪大社「十五夜祭」(長野)
長野県の諏訪大社では、9月15日に相撲踊りや相撲甚句を奉納する行事がおこなわれており、江戸時代から続く伝統行事となっています。十五夜に相撲という取り合わせは全国的にも珍しいですが、相撲も古くは神事としての側面を持っていたのですね。
諏訪大社の十五夜祭は無形民俗文化財にも指定されています。
(諏訪大社公式サイト:http://suwataisha.or.jp/)
猿賀神社「十五夜大祭」(青森)
東北最大の十五夜祭が、青森県申が神社の十五夜大祭。旧暦8月14日から16日までの三日間にかけて行われ、初日には津軽神楽・獅子舞を鑑賞することができます。
猿賀神社は、桓武天皇の時代に坂上田村麻呂の奏上によって建てられたという由緒ある神社です。東北にお住まいの方、東北旅行に行かれる方はぜひ一度足を運んでみてください。
(猿賀神社公式サイト:http://saruka.webcrow.jp/)
まとめ
日本人ははるか昔から月を特別なものとみなして観賞してきました。平安時代以降、十五夜・十三夜などのお月見の行事ができあがり、今もその伝統が続いています。また、もともと月見の行事ではないですが、十日夜にもお月見を楽しむところがあります。
お月見の行事は旧暦を基準に設定されているので、毎年日付が変わります。今年の満月がいつか把握して、お供え物や各地のイベントなどを楽しんでください。
風流に月を楽しむ伝統行事であるお月見には、月を信仰した日本人の価値観が色濃く残っています。これからも長くこうした風習を続けていきたいですね。