お彼岸にはお墓参りを、というのは日本の一般的な習慣となっています。
家の近くにお墓があるという方は日常的に出かけることができますが、親戚や地元の友人といったような場合には、なかなかそうもいきませんよね。
そこで、お盆や年末年始といった長期休暇に加え、お彼岸の時期もお墓参りの一大シーズンとなっています。
お墓参りは、葬儀のように厳格な雰囲気の中で行うものではありません。
しかし、だからといって砕けすぎているのもふさわしくはないです。
また、ただ墓石の前で手を合わせればいいのかというと、そうでもありません。
そこでこの記事では、お墓参りの基本やマナーについてまとめ、執筆をしました。
実際にお墓参りに出かける際に、困らないように、要点をしっかりと心得ておきましょう!
お彼岸にお墓参りをする意味とは?
春分の日と秋分の日は、太陽が真東から昇り、真西に沈むため、「昼と夜の長さが等しい日」とされています。(厳密には14分程度の違いはあります)
また、彼岸とは「あの世」「仏様の住む極楽浄土」を指すものとされており、真西に存在している世界というのが仏教の考え方です。
よって、太陽が真西に沈んでいく春分の日と秋分の日は、我々が生きている世界(此岸)とあの世(彼岸)が1年の間で最も近づく時期であり、昔の人たちはこの時期に先祖供養をする習慣がありました。
現在もお彼岸の時期になると、お墓参りに出かける人が多いのですが、こういった理由からなのですね、
お彼岸とは、春分の日と秋分の日をそれぞれ中日とした前後3日間ずつの時期を指します。
この時期にお墓参りに出かける際、いつ行くのがいいのかという疑問についてまとめていきましょう。
結論から言えば、1週間のお彼岸の期間の間に行くのであれば、いつでなければならないという決まりはありません。
しかし、春分の日と秋分の日当日が、彼岸と最も近くなる日であるということもあり、その日にお墓参りに行くのがいいとする考え方もあります。
また、時間帯については午前中に行くのが一般的です。
もちろん、午後に行く場合も問題はありません。
しかし、午後の場合霊園が閉まる可能性もありますし、閉園前でも霊園に迷惑をかけてしまうかもしれないので注意が必要です。
どうしても、遅い時間でないと行けないという場合は、予め霊園に連絡したり、ササっとお墓参りを済ませたりして、迷惑をかけないようにするのがいいでしょう。
お墓参りや仏壇参りのお供え物の基本「五供」とは
お墓参りや仏壇参りのお供え物の基本に「五供」というものがあります。
これは、お香・お花・お仏飯・お水・お灯明という5つのお供え物を指します。
お供え物をする意味は、故人に感謝を示すためです。
自分が今、この世界で生きていられるのはご先祖様の存在があり、尊いいのちを与えてくれたからこそである、ということへの感謝の気持ちをお供え物で伝えているのです。
それでは、五供それぞれについて、簡単に紹介していこうと思います。
お香
仏様は香りを召し上がるとされており、お線香から放たれる香りを供養の基本としています。
これに加えて、お供えしている人自身の心と身体を清めるという意味もあるのです。
自宅からお線香を用意して、お墓に持って行くのが基本ですが、霊園によっては線香を販売し、チャッカマンやガスコンロといった装置を設けているところもあります。
ちなみに、お線香をつけたときに使用した火は、息を吹きかけて消すのはタブーです。
これは、口が不浄のものとされているためで、仏様への失礼に値してしまいます。
誕生日ケーキのロウソクを消す感覚で息を吹きかける、というのではなく、手で仰ぎながら丁寧に消すということを心がけましょう。
お花
仏様はお線香の香りだけではなく、お花の香りも召し上がります。
お花は美しいものであり、どんなに心がすさんでいたとしても、素敵なお花があればそれだけで心は穏やかにもなります。
それだけお花は素晴らしいものであり、故人に感謝の気持ちを示す上では、最も重要なものともされています。
また、お墓に供えられたお花からは、お供えする側の人間に対しても、「その美しい花のように清らかな心をもった人間でいてほしい」という仏様の教えや願いを表すことにつながります。
こうして現世に生きる我々と仏様の対話にもつなげることができるのです。
仏壇にお供えするお花については、長持ちする造花やドライフラワーを選んでもいいですが、お墓参りについて言えば、できるだけ生花を選びたいものです。
少々値段は張ってしまいますが、お墓は毎日来られるとも限りませんし、仏様が安らかに眠られている場所であるので、花が発する自然の香りを届けてあげたいですからね!
しかし、棘のあるものや香りの強いものは、お墓に供える花に向かないとされていますので、注意して下さい。
お仏飯
お仏飯とは、ご飯をお供えすることです。
お墓参りの際のお供え物としては、菓子折りや果物が一般的です。
特にお彼岸でのお墓参りでは、春には牡丹餅、秋にはおはぎがお供え物の定番となっています。
牡丹餅やおはぎは、原料として使われている小豆の赤色に魔除けの力が宿っていると考えられているため、人気のお供え物になっています。
また、このほかにも故人が生前好きだった食べ物をお供えするケースもあります。
やはり、好きだったものを食べてほしい、それでもって今後も温かく見守ってほしいという思いが我々にもありますからね。
お墓参りの際には、お供えした後、そのまま放置して帰るというわけにはいかないので、そのまま食べ物を頂いてしまっても失礼には当たりません。
むしろ、長い時間放置しておいて傷ませてしまい、それで処分をしたり、腹痛を起こしたりする方がよっぽど良くない結果になります。
もし、お供えしたまま放置をしていると、動物にお墓を荒らされたり、虫がたかってきたりする危険性もあります。
そのため、「お仏飯は持ち帰る、すぐに頂く」ということを基本として押さえておきましょう。
お水
お墓には一般的に「水受け」と呼ばれる楕円形の小さなくぼみがあります。
ここに、お水を入れるのが基本となっています。
水受けに水を入れる際の正しい作法は、柄杓を使ってゆっくりと溢れないように水を入れることです。
桶に汲んである水を一気に入れたり、手ですくって入れたりするのは故人への失礼にあたります。
きちんと作法を守って行うようにしましょう。
ここに入れる水は、必ず透き通った新鮮なものにしましょう。
清らかな水をお供えすることで、お墓参りに来ている人々の心が清らかにされていくという意味があります。
なお、墓石を掃除する際にも桶に水を汲んでいると思いますが、お供えする水には、それとは別に桶を用意しておくようにしましょう。
そもそもの用途が違いますので、面倒くさがらずに、同伴者と協力しながら桶を持ち運びましょう。
お灯明
お灯明とは、ロウソクに火を灯すことで、「灯燭(とうしょく)」とも言います。
お墓には、石灯籠があることが一般的で、これが故人のいる場所や道を照らすものとされています。
ロウソクに火をつけることで、周りの暗闇は明るく照らされることになります。
これは、私たちの心の中にある暗い煩悩を取り除くことを意味します。
しかし、お墓参りは基本的に夜ではなく、午前中や昼間の明るい時間帯にいくものですね。
そうなると、お灯明は意味がないのではないかと感じる方もいるかもしれませんが、その火を灯すということ自体が実は供養になっているのです。
そのため、たとえ周囲が明るいのだとしても、五供の1つとして、きちんとロウソクに火を灯すのも忘れないようにしましょう。
また、お参りを終えた後には必ず火を消すことが大切です。
その際には線香と同じく、口で吹き消すのではなく、手で仰いで消すことを心がけましょう。
お布施の意味や金額の相場

僧侶
お布施とはお寺の僧侶に対して、読経や戒名をいただいたお礼、または供養のお礼として、金品をお渡しすることを言います。
お布施は決まった金額はありません。
また、あくまで「感謝やお礼の気持ち」を意味するもののため、僧侶の側から請求されるということもありません。
しかし、実際にお布施をお渡しするということになった時のために、ある程度の相場は知っておいた方がいいでしょう。
簡単にシチュエーションごとの相場を紹介しておきます。
通夜、葬儀・告別式の際は最も相場が高く、最低でも20万円以上、高ければ50万円程度が相場になります。
これ以外には、相場は一気に下落し、四十九日や一周忌といった、故人の死後早々に訪れるシチュエーションでは3万円~5万円程度、納骨や開眼供養の際は1万円~5万円程度、お盆法要やお彼岸法要の際は3000円~3万円程度というのが相場になっています。
もちろん、これはあくまでもお布施のみの相場であり、実際にはその他の様々な諸経費はかかってきます。
お墓参りの基本的な作法手順

お墓
お墓参りに行くと、お供え物をしたり、合掌したり、掃除をしたりとやることが色々とあります。
すると、何から順番にやっていけばいいのか分からなくなってしまいますよね。
そこで、ここからはお墓参りの一般的な手順について、簡単に紹介します!
手順1 あいさつ
まずは何事の基本でもありますが、あいさつはきちんとすることが大切です。
心のこもったあいさつをするように心がけましょう。
なお、あまりかしこまりすぎるのも考え物です。
故人とのいつもと変わらない接し方でのあいさつをすればOKです。
手順2 掃除
あいさつが終わったら、まずはお墓を綺麗にします。
まずは墓石周辺の草や落ち葉を集めたり、花立や小皿の汚れを落としたり、墓石を布やスポンジで磨いたりといった作業を行います。
そのあと、墓石全体にお水をかけ、お墓を清めることで掃除は終了となります。
なお、宗派によっては墓石が傷むというような理由から、お水をかけないというやり方もあります。
手順3 お供え物
お墓がきれいになったら、用意してきた食べ物やお花等をお供えします。
持ってきたお供え物は、そのままベタ置きするのではなく、半紙や懐紙を敷き、その上にお供えします。
この時に黙々と作業的に置くのではなく、一言二言添えながらお供えしていくと、故人と心を通わせることもできるでしょう。
手順4 お線香
お供え物が終わりましたら、次はお線香をあげましょう。
お線香(お香)はお供え物の基本である五供の1つでありますが、仏様は香りを召し上がるものとされているため、とりわけ重要なものの1つと考えられています。
お線香のお供えの方法は、立てる方法と寝かせる方法と2通りあります。
基本的にどちらかでしかお供えできないようになっていますので、その方法に従ってお供えするようにしましょう。
手順5 合掌
お線香を供え、香りが充満してきましたら、次は合掌です。
ただ単に手を合わせるというだけではなく、故人と心を通わせ、そして自分の思いや近況を伝える大切な時間になります。
なかなか他人には言えないこともあると思いますが、ここで故人にだけは打ち明けるということで、心が救われる面もあるのではないでしょうか。
なお、合掌は全員同時に行うのではなく、縁の深かった人間から順番に行うようにするのが基本です。
そして、立ったそのままの姿勢で合掌するのではなく、墓石よりも低い位置まで腰を低くするのが礼儀です。
手順6 片付け
最後は後片付けです。
「来た時よりも美しく」という状態になるよう心がけて片づけを行いましょう。
お供え物もそのまま供えっぱなしにするのではなく、必ず持ち帰りましょう。
食べ物を置いたままにしておくと、虫がたかってきたり、動物や鳥に食い荒らされてしまったりする恐れもあります。
そして、ごみは必ず持ち帰りましょう。
ごみを置いて帰ると、罰が当たるかもしれません。
以上が、お墓参りの際の大まかな手順となります。
お墓参りの持ち物セット
次に、お墓参りの際には是非とも持参しておきたい持ち物を簡単に挙げてみます。
管理人のいる墓地
管理の行き届いた墓地です。
水場にバケツや手桶・柄杓があり、必要最低限の持ち物を持参すればいいです。
・軍手・・・雑草など掃除作業に。
・ゴミ袋・・・雑草やゴミを持ち帰ります。
・ソフトたわし・・・墓石についたコケや汚れを擦り落とします。
・数珠・・・手を合わせるときに。
・お線香・・・墓前に添えます。
・お花・・・墓前に添えます。※必要があれば。
・お菓子・・・墓前に添えます。※必要があれば。
管理人のいない墓地
管理する人のいない墓地は、雑草や落ち葉などで荒れてて、掃除が必要な状態になっています。
なので、掃除してから墓前に手を合わせる流れになります。
・ほうき・・・落ち葉や抜いた雑草を掃除するのに必要です。
・草を刈る鎌(かま)・・・雑草が多い墓地ならあると便利です。
・軍手・・・草抜きなど作業がスムーズに進みます。
・ゴミ袋・・・掃除したゴミを入れます。
・大きな水ボトル・・・お墓や手を洗うのに必要です。
・雑巾・・・墓石を拭いてきれいにします。
・ソフトたわし・・・墓石についたコケや汚れを落とします。
・お線香・・・墓前に供えます。
・お花・・・墓前に供えます。※必要に応じて
・お菓子・・・山に近い墓地だと野生動物に荒らされる可能性があります。
基本的に、お供えするもの以外は霊園に用意されている可能性があります。
有料の場合も少なくありませんので、小銭数枚と1000円札数枚も用意しておいた方がいいかもしれません。
絶対に忘れてはいけないのは、お供え物、特に食べ物です。
お花は、最悪霊園側で用意してくれている場合もありますが、さすがに食べ物までは用意されていると考えない方が良いでしょう。
仮にあったとしても、それが故人が喜んでくれるものとは限りませんからね。
その準備だけは、抜かりなくして、お墓参りに出かけるようにしましょう。
お墓参りのマナーや服装

墓参りの風景
お墓参りの際には、墓石を掃除するということを紹介しましたが、これは結構大きな動きをしなければならず、疲れます。
そのため、服装選びにも少し注意が必要です。
服装
お葬式ではないので、喪服で行く必要はありません。
それよりも、掃除のしやすいできるだけ動きやすい服装が奨励されます。
また、管理されていない墓地ですと、その作業で靴もかなり汚れてしまう危険性があるため、そうなっても構わない靴を選んで履いていくといいでしょう。
だからと言って、華美な色合いのものや露出の激しいものは避けた方がいいです。
また、服装ではありませんが、香水などにおいがきついものもつけるべきではありません。
故人は線香やお花の香りを召し上げるとされているので、その邪魔になるようなにおいはつけないのが賢明です。
作法マナー
次に、お墓参りのマナーについて簡単に説明します。
服装については、ご説明した通りです。
時間帯について言えば、午前中か午後の早い時間帯が望ましいです。
それは遅い時間になると、霊園が閉まる可能性があり、霊園側への迷惑となってしまうからです。
また、古くからの教えで「お墓参りは午前中に行くべき」というものがあります。
それは、お墓参りは何かの用事のついでに行くようなものではなく、それがメインのイベントとして行くべきであるという考え方に基づいています。
しかし、仕事の都合等、様々な条件がそれぞれの人にはあります。よって、この限りではありません。
結局大切なのは、「気持ち」の部分です。
お墓参りに訪れた際に、その感謝の気持ちをきちんと示せるかということが何よりも重要なのです。
そして、最後に紹介するマナーは、霊園内で騒がないことです。
公衆の場ですので、当然と言えば当然ですが、中には周囲への迷惑も顧みずに大きな声で話しているような集団もいます。
しかし、霊園とは、故人とその家族が心を通わせ合う大切な空間です。
また、故人が安らかに眠っている場所でもあります。
みなさんも、自分が心地よく寝ている時に周囲でギャーギャーと騒がれたら、眠れなくなってしまいますし、迷惑に感じますよね。
それと同じで、たとえ他の参拝客がいない貸し切り状態になっていたとしても、多くの故人の眠りを妨げることに繋がるので、絶対に騒ぐべきではないのです。
お彼岸法要・彼岸会とは?意味は?

ろうそくの炎
お彼岸法要とは、お彼岸の時期に先祖を供養し、仏様をたたえるために合同で行われる法要のことです。
彼岸会とも呼ばれます。
起源については定かではないのですが、平安時代から朝廷で行われていたとされる、歴史のある行事です。
また、仏教を信仰している地域はインドや中国をはじめとして、世界各地にありますが、彼岸会は日本独自の行事となっています。
この行事には、お寺の檀家になっている人やそのお寺が運営している墓地にお墓を持っている人が参加します。
行われる場所は、基本的にはお寺の本堂ですが、お寺ではなく霊園が主催する場合もあります。
その場合の会場は、霊園内の法要会館であることが多いです。
この法要では、極楽浄土に到達するために必要な六波羅蜜と言われる修行を行うこととされています。
六波羅蜜とは具体的に、見返りを求めない布施を行う「布施」、自らを戒める「持戒」、いかなる辱めも堪え忍ぶ「忍辱」、絶えまなく努力する「精進」、座禅し、自分を見つめなおす「禅定」、これらの波羅蜜を通じて智慧を得る「智慧」という6つの波羅蜜を指します。
これらは、此岸にいるうちに達成しておく必要があるのですが、日常生活においてはなかなかその実践が難しいため、せめて春と秋の彼岸の時期に、実践しておこうというというのはお彼岸法要の考え方です。
自分が現在生きているという事実に改めて向き合い、そして感謝をする日であると考えればいいでしょう。
なお、合同で行う法要だけではなく、住職の方が檀家を回って個別にお彼岸法要をしてくれる場合もあります。
しかし、このような要望は比較的多く、住職の方も忙しくしているため、なかなか予定を取り付けるのが難しいという現実があります。
もし、個別の法要をお願いしたいのであれば、早めにその希望を伝えておくのが賢明でしょう。
お彼岸法要・彼岸会のお布施
僧侶に法要を行っていただく際には、それに対する感謝を示すためにお布施を渡すのが一般的です。
合同法要の場合の相場は3000~5000円程度ですが、自宅に招き個別に法要を行っていただいた場合の相場は30000~50000円程度となります。
お彼岸法要・彼岸会の服装
お彼岸法要は、喪服で行かなければならないというイメージを持たれるかもしれませんが、意外にもそうではありません。
さすがにTシャツと短パンのようなラフすぎる服装は論外ですが、地味目に抑えられている服装ならば問題ありません。
まとめ
この記事では、お墓参りの基本やマナーについてまとめました。
お墓というのは故人が安らかに眠られている場所であり、唯一、現世にいる我々と故人が繋がれる場所になります。
そこで自分の近況を報告したり、生前の報いに対しての感謝を伝えたりするのですが、やはりきちんとふさわしい作法で行いたいものですよね。
お墓参りは仏教の教えに関わることであり、色々と厳格に守らなければならないこともあります。
故人に失礼を与えず、なおかつこれからの自分の人生を安心して見守っていただけるように、この記事で紹介したようなお墓参りのいろはを心得ておきましょう。